研究所に入って早1ヶ月半。

すっかり南国の日差しにも慣れ、日焼けした体は「現地人と大差ないねぇ。」ってのはカドワキ先生の言葉。

暇があればニーダに頼んで船を出してもらって、カメラを携え研究所の周囲の小島を巡り

現地の人々の話を聞いたり写真を撮っている。

今んトコ雑誌に送る為って訳じゃないけど、ジャーリストの癖みたいなもんだ。

知らない土地に行ったら、まずその土地と人を知りたくなる。

職業意識ってよりも好奇心。

それが俺の原動力。

 

 

3. 穏やかな日々

 

 

「よ。ニーダ。」

朝食を終えて桟橋へ散歩がてら歩いて行くと船の傍でニーダが荷物をチェックしていた。

 

ニーダは探索時の操舵って仕事以外にも他の小さい島々に薬を届けたり、荷物を運んだりと結構忙しい。

こんな偏狭の土地では、例え街では大したことのない病でも命を落とす者も居たと以前行った島で聞いた。

研究所設立時に地域の人々に倦厭されない対策の一環として地域医療の援助を惜しまないとの確約で随分改善されたそうだ。

たまには国家もまともな事をするもんだ。と思ってたらシド所長の努力の賜物だったらしい。

あのおっさんも暢気な顔して結構ヤルよな。

 

「ラグナ!おはよう。今日も行く?」

「あぁ。今日は長老が会ってくれるって話だったからな。」

「いいよ。その前に別の島に寄るけど構わないか?エルオーネに頼まれ事してるんだ。」

頷くと俺はニーダのチェックした荷を船に積む作業を手伝った。

最初の頃は俺が荷運びを手伝い、ついでに取材をしていたのだが、その内ニーダから自発的に取材に付き合ってくれるようになった。

今では一端の助手代りに島の年寄りから取材許可を取り付ける手伝いをしてくれたりする。

本当にいいヤツだ。

荷積みを終えた後、俺達は研究所に一度戻る事にした。

どっちにしろ機材を持って来ないと取材にならない。

 

研究所の通路を部屋に向かって歩いていると

「ラグナさんっ!」

シュウが遠くから見つけて急いで走り寄ると声を掛けてきた。

「よっ。おはよーさん。」

「おはようございます。」

礼儀正しく挨拶を交わす俺にシュウが少し息を切らしながら微笑みを返してチラリとニーダの顔を盗み見た。

「もぅお出かけになられますか?」

「そのつもりだけど?何か用事入った?」

「いえ。その前にウォード教授が探しておられたので。」

「ウォードが?」

「はい。」

「あっそ。分かった。サンキュ。」

俺は自室に戻った後、ウォードの部屋に向かった。ウォードの居室は俺の部屋から通路を挟んで斜め向かいにある。

いつも通りノックと同時にドアを開ける。

「おぅっ!ウォード。」

慣れたもので驚きもせずチラリと一瞥するとウォードはニヤっと笑った。

「よぉ。色男。」

「はぁ?何だよ。イキナリ。」

「エルオーネがな。お前の取材に同行を申し出ててな。連れて行って欲しいそうだ。」

「何で?」

「興味があるんだろ?・・・お前に。」

「はぁ??何でそーなるんだ?」

「取材のことを色々ニーダに聞いてたらしいぞ。」

「へぇ。んじゃ興味あんのは取材だろ。彼女そーゆーのに関心あんのか。感心感心。」

「・・・・ラグナ。」

「冗談で言ったんじゃねぇぞ。最近の若いもんは新聞も読まねぇからな。」

関心と感心をかけた冗談だとでも思ったのだろうウォードの呆れた呼び声にちとアセル。

俺としては高尚なギャグを狙った訳ではない訳でもナイがそこまで呆れた顔をされた日には、しらばっくれないと俺のセンスが疑われる。

「ん〜。も、どーでもイイや。で。そんだけか?話は?」

出て行こうとドアに手をかけた俺にウォードが笑う。

「まぁ待ってくれ。」

「何で?俺も忙しいのだよウォード君。」

「俺も行く。」

投げやりな言葉遊びのような会話をしつつ、身支度を整えるウォードを待つ間にデスクの上にあったパソコンを覗く。

この海域の海流を模式化したCGと時間の移り変わりを示す予想CGが映っている。

朝飯もそっちのけで研究ばかりの日々。

こりゃ、モテねぇハズだ。

 

 

船に戻るとニーダがエルオーネと並んで談笑していた。

そんで俺達を見てにっこりと笑った。

意識した訳でもないけどちょっと照れる。

確かに彼女は可愛い。

優しく微笑む口元がちょっとレインを思い出させた。

 

 

ニーダの資材運搬も無事に終り、昼下がりの熱帯の島々はノンビリとリゾート気分。

島のオバちゃん連中の振る舞いで腹一杯の手料理をゴチになってイイ感じだ。

車座になって、ノンビリと煙草をふかす長老がポツポツとこの辺りの伝説めいた昔話を話してくれた。

俺はレコーダーでそれを録音しながら、時折写真を撮り、メモを取ってニーダに指示を出す。

俺の取材も滞りなく、いたって順調。

ウォードは黙って長老の話を聞いていた。

一方、エルオーネは村人から検診を頼まれて掛かりっきりになってたから、何の為に付いて来たのやら分からなくなっていたが・・・。

結局俺達が船に乗って島を後にする頃には、辺りはまだまだ明るかったが陽は傾き始めていた。

 

 

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お待たせしました〜。(って待ってたヒトは居るのか?・・・orz)やっとこさ、続きをup出来ました。どんどん長くなっていく予感に薄ら寒いモノを感じます。

長い話書くの苦手なんですけど(気が散るから)・・・ラグナが勝手に動いてしまう・・・よ。と泣き言も言ってみる。気長に続きをお待ちくださいね。。。