ケアルの光の中でシャドウは消えた。

そして、その後にはピアスが一つ落ちていただけだった。

それは俺がもっていたピアスの片割れ。

 

もう一つ俺の手の中にあったピアスを床に落とすと、俺は持っていたモールを振り下ろした。

ガリっと石と石が擦れる音がして、ピアスの石は粉々に砕け。

そして、シャドウが残していったもう片方のピアは少し離れたところで、小さな音を立てて自ら割れた。

かつてミスラ達がお互いの絆を確か合う為に使ったといわれる「双子石のピアス」。

俺たちはこの石の使い方を知らなかったばっかりに、逆に石の力に振り回されて…。

でも、結局はそんなことになったのだって俺のせい。俺が不甲斐なかったからなんだ。

俺には誰も責められない。

 

 

 

振り返って、ラウールと目が合う。

俺は呼吸を整えながら、ラウールに向き直る。

 

もうとっくに俺の掛けた弱体なんて切れてるハズなのに、ラウールは何も話し掛けてはこない。

表情も…何を思って何を考えてるのか分からない。殆ど無表情…。

 

もう、俺からは何も言う事なんてないのに。

俺から許しを請うなんて出来る訳が無い。そんな事をしたって、きっとあなたの怒りを買うだけだ。

ずっとあなたの傍に居たくて、その為に起こした行動だったのに。でも、俺は愚かで浅はかで。自分の事で精一杯で。

あんなに根気強く荒れていた俺に付き合ってくれてたあなただったのに、こんな風にあなたまで苦しめて。

愛してるとまで言ってくれたのに、結局俺はあなたを裏切って、傷つけただけだった。

 

俺の手元には何も残らない。

でも、何も無い方がこの先何も失わずに済む…。

 

礼儀的に一通り状態異常回復のスペルを唱えてラウールにかける。

一瞬眩しそうに目を細めた以外、ラウールはそれでも動かなかった。

ただ、じっとその場に立ち尽くし俺を見ている。

 

ラウールの視線が痛い。

消えてしまいたい…。

今すぐにでもここから俺を消してしまいたい。

サポが黒ならとっくにデジョンしていただろう。

 

でも、もうこれ以上ここにこうしてラウールの視線に晒されている事に耐えられなくて、俺はなけなしのMPでテレポを詠唱し始めていた。

 

そして、その途端だった。

テレポを詠唱しだした俺を見て、ラウールの表情が初めて変わった。険しい表情で小さく舌打ちをすると、足早に俺に近づいてくる。

その表情が俺には恐ろしくて、一瞬びくんと体が萎縮する。

いくらサポ赤でファストキャストがあるからとはいえ、サポのファストキャストなんで高々しれてる。テレポの詠唱は

長すぎて全然間に合わない。

 

そしてラウールは乱暴に俺の左腕を掴むと強引に自分の方へと引き寄せた。

 

「うぁ…ッ!」

 

さっきの戦闘で痛めていた肩に激痛が走り、魔法の詠唱はあっけなく止まった。

あまりの痛さに身体が傾き、思わずラウールの肩に右腕ですがりつく。

脂汗が額に浮き出ていたのが自分でもわかった。

それでも、何故か俺は自分にケアルをかける気にはなれなくて…。

 

「俺から逃げるのか?」

 

酷く低い声だった。

今まで聞いたことのないような、恐ろしく低いラウールの声。

肩の痛みで一瞬飛んでいた思考がその声に引き戻される。

 

「そんな事は許さん!」

 

強い口調で吐かれたその台詞に、はっとラウールを見上げた。

そのラウールの瞳にあったものは、狂気にも似た怒り。視線がかち合ったが最後、逃げられ様もない強烈な眼差し。

それだけで俺は強制的にラウールに支配され、身じろぐ事さえ出来なかった。

俺の胸を否応なく締め付ける、愛しさと…罪悪感が入り乱れて、息も出来ないほど苦しくて。

 

俺はあなたの目の前で他の男を誘惑するような真似をしたのに、それでもあなたは俺を手離さないなんて。

どうかしてる…。

 

そんなラウールを思うと、もうどうしようもなく愛しくて、胸の奥が全身が疼くように揺すぶられる。

 

「許さない…!」

 

再び唸るような低い声が耳元で呟かれる。

ラウールの手から左腕が解放された。が、その手が伸びてきて、そして今度は傷めた肩を直接掴まれる。

 

「あぁぁッ!!」

 

剣を振るうために鍛え上げられたその腕で、持ち上げんばかりに肩を握られ、俺の頭はその痛みに真っ白になる。

全身が硬直し痛みに息が上がる。体中が汗でびっしょり濡れて気持ち悪い…。

 

…狂ってる…

それは、ラウール?それとも…俺…?

 

「……ラゥ……ル…ぅ…」

 

搾り出すように名前を呼んだ。つもりだったけど、声になっていたかどうか。

 

途端に肩を掴まれていたラウールの手の力が緩められ、俺は痛みの緊張感から解放され浮遊感に襲われた。

それが貧血で自分の体が崩れたのだとわかったのは、いつの間にかブラックアウトしていた視界が戻ってきてからだった。

気を失っていたのか、そうでないのかさえ分からなかったが、時間の経過がないことは肩の傷みが示していた。

激しいまでの痛みからは解放されたものの、体中のどこにも力が入らない。頭の芯も疲れきってるのか、

何の考えも何の感情も浮かんでこない…。

肩の痛み以外の感覚も乏しくて戦闘不能に似てるなとぼんやり思ったが…。でも、痛みがあるし、呼吸は出来ているし、瞬きも出来るし…

 

今…俺…どうなってるの?

 

ただ見えたのは……天井?

高くて白い天井。薄暗い空間。

それでようやく自分が床に倒れてるんだと気付いた。

 

視界に銀色の何かが見えている。

頬に触れているのは、髪…かな?くすぐったい。

 

…ラウール?

 

感覚が戻りつつあるらしい。

 

ここは…そうだ、フェ.インで……

…………それ…で……………

 

急激に頭の中が冴えだす。

 

「いやぁっ!」

 

さっきまでの事がフラッシュバックして…そしてあの罪悪感と今置かれている自分の状況が把握できない恐怖感から、

俺は拒絶の声を上げていた。

右手に当たったものを反射的に押しのけようとして、それがラウールの身体で、俺に覆い被さっていた事に初めて気がつく。

 

そして、はっとさせられた…

 

俺が上げたその声にラウールの体が一瞬硬直するのが伝わって…

肩に埋められていた顔がゆっくりと上げられると、そこには狂った男の顔があった。

恐ろしく冷たい光を宿した灰色の瞳…それは俺が知っているラウールのものとは違っていた。いや、一度見たことがあったかもしれない。

ずっと以前に…

 

まるで檻の中から放たれた猛獣を目の前にした、そんな恐怖感に襲われて、俺は息を飲んだ。

 

骨ばった浅黒い肌の色をした手が伸びてきて、無言で俺の顎を掴む。ラウールの視線が俺の…唇の辺りに

据えられて、ただ無言でじっと見つめられる。

 

何を考えてるんだろう…?もしかして…さっきのシャドウとの事を…

 

ラウールの顔が近づいてくる…。何をされるのかわからない恐怖で、無意識に身体に力が入る。

強引なラウールのやり方に抵抗しようと首を左右に振ろうとするものの、有無を言わさない力で顎を固定されてびくともしない。

 

「…ん…」

 

唇が重なる…

 

暖かくて柔らかい唇の感触に、場違いに一瞬ほっとして力が抜ける。

けど、そんな余裕はそうは続かなかった。

力が抜けたその瞬間にラウールの長い舌が俺の中に入り込み、激しく俺を攻め立てる。疲れた身体にラウールから

与えられる刺激が強すぎて、あっという間に意識を持っていかれそうになる。弱いところをしつこいまでに責められ、

自分の意志とは関係なく身体は反応してびくつき、頭の中が朦朧としてきて…。息が苦しくて、空気を求めて激しく頭を

振ろうとするが、それすら許されない。

激しい口接けに溢れた唾液が耳元まで流れてきて気持ち悪かったけど、かまっていられなかった。

 

不意にラウールの唇が離れ、開放感が襲う。

 

「ふあっ…ぁ…」

 

新鮮な空気が肺に流れ込むその感覚にも眩暈がする。

苦しい…肩が熱い…。左肩に心臓でもあるみたいにずきずきと脈打ち、熱さと痛みが耳の辺りまで襲ってくる。

左腕は既に俺の意思には反応しない。

荒れた息をしながらゆっくりと目を開けると、恐ろしく無表情なラウールが俺をじっと見ていた。

そして赤く濡れた唇がゆっくりと動いて…

 

「お前の中からあいつを完全に追い出してやる…」

「な……あっ!」

 

言うが早いかいきなり服の上から中心を掴まれ、声が裏返る。

 

…酷い…

そんな風に言われたら、自分の意志なんて関係なく嫌でも思い出さされる。

ついさっき俺の目の前から消えた、俺が消したあのヒトの存在を…思い出した感触を…

痛みと快楽と…そして…。

……これは拷問だ……

 

性急に下半身の装備を脱がされ、ラウールの剣を持つものにふさわしい骨ばった大きな手で直に扱われる。

さっきまで与えられる刺激にも、肩の痛みで反応していなかった俺のものも、直接与えられる刺激にあっという間に

大きさを増すのが分った。

 

「やぁッ……こ…んなとこ…っ…でぇっ………」

 

人が来るかもしれないのに…!

 

言ってみたものの、聞き入れられるわけはなく。

ラウールのその手から逃れようと、動く右腕で肩を押しのけようとするものの、痛みで無駄に体力を奪われ力が

入らない。

俺の抵抗なんて意にも解さず、ラウールの顔が肩にうずめられ耳元から首筋を執拗に愛撫される。

 

「ん…あっ……くぅ…んっ……」

 

外なのに…声が押さえられない。押さえるだけの気力も体力も既になかった。

ラウールの空いた手がブリオーの裾から滑り込んできて、身体のラインをたどり突起を探り当てられる。

そして捻られ押しつぶされ、過敏にされたところをさらに爪で弾かれる。

俺のものを扱う手も休みなく上下に動かされ、体中が意に反して跳ねまくる。

 

「ああっ!…はぁっ…っんぅっ……あっ……」

 

もう、快楽なのかどうなのか…分からない。

 

許容量を越えた刺激と、痛みと、羞恥心と、激しい罪悪感と…屈辱。

それらが交じり合って、もう何がなんだか自分でもワケがわからなくて、思考は既に停止していた。

ラウールにこんなあからさまに乱暴に扱われた事なんてなくて…。

…ただ、涙が溢れてきて止まらない…

 

なのに、俺の身体だけはその激しさに悦んでいる………

その事実を自覚して、鳥肌が立つ。

 

ラウールの手が俺の後ろへ滑り込み、菊門をほんの少しなぞられる感触に一層身を硬くする。

その指が強引に俺の中へ進入してくる…

強烈な摩擦と内臓へ進入してくる異物感に体が今までになく仰け反り跳ね上がる。

 

「あぁぁっ!」

「暴れるな!肩に障る。」

 

そ…そんな事言われて…も……

 

言われて初めて自分の左肩を床で打ち付けたことに気がつく。…麻痺してきてる?

自分の自由にならない身体で辛うじて首を横に振る事で、苦しくて自分ではどうしようもない意思を伝える。けど、

そんな事に今更意味があるのかどうか…。

 

ラウールの指が更に進入してきて壁の内側を解しだす。

骨ばって硬い指の腹が俺の中で暴れている…

 

「…くぅ…っ……あっ…あっ……」

 

指の動きに合わせて声が漏れる。もう、漏れる声も反応する身体も抑える事は出来なくて、ラウールの思うままに

されるこの身体が自分のものじゃないみたい…。

そう感じ出した途端に身体の感覚と入れ替わるように頭の中に色んな事が浮かんできた。

 

……なんで…俺はこんな事されてるんだろう……?

おれのこんな身体にラウールは何を求めてるんだろうか?

 

『お前の中からあいつを完全に追い出してやる』

 

ラウールのその言葉が再び俺の中に蘇る。

 

だって…それにケリをつけに来たんだよ、俺は…?

でも、ラウールがどんなに頑張ってみたところで…俺がかつてガーウィンの相棒だった…いや、恋人だった

事実自体が消えるわけじゃない。それだって、確実に今の俺を構成している要素の一つなのに。それはでも…

ラウールには受け入れられないものなの?それは過去にあった俺自身を否定されてるって事にならない…?

 

俺はどうすればいい…?

 

そう思えば思うほどに、かつてガーウィンといっしょに過ごした日々が俺の中に鮮明に思い出されてきて、俺は唖然とした。

でも、今俺に触れている指も身体も…ガーウィンのものじゃない。あの気さくで陽気なエルバーンはもう居ない。

 

今、俺を抱いているのは…

銀髪で切れ長の目をしたエルバーン。生真面目で几帳面、気高さと風格を持ち合わせたエルバーンの理想を

絵にかいたような人で、優しいくて強い…俺の愛しい人…。二人は同じエルバーンなのにこうも違う。

そんな人が狂気を宿した目で俺を壊さんばかりに抱いている。

 

何であなたは俺を抱くの?

そこまでして、何を手に入れたいの…?俺のちっぽけな身体?

「俺」は要らないの…?身体が欲しいならあげる。そんなものでよければ…

あなたの思い通りになれば、俺はあなたの傍に居られる?もしそうなら…

 

……なら、「俺」なんて捨ててもいい……

 

 

ラウールの指が…俺のポイントにたどり着く。

内側から直接的に与えられるだろう快楽の予感に俺の身体が小刻みに震える。

 

「…や…ぁ…」

 

そんな俺の顔を覗き込んで、ラウールの顔がふっと笑った。

…それは支配欲を満たされた雄の獣の雄の満足げな顔にも見えた。

そしてその指がくっと曲げられる。

 

「んあぁっ…!」

 

そして俺のそこを指で擦り上げ、同時に中心をも激しく扱われる。

 

「やぁっ…あっ!あっ…もぅ……だ…あぁっ!!」

 

あっという間に目の前が白くなって、俺はあっけなく自分の腹を汚した…

 

急速な開放感と泥のような疲労感が襲ってきて、息をするのも苦しい。

全身が汗でぐっしょりで、逝ったばかりで熱いはずなのに…寒い。左肩だけが妙に熱くて、変な感じだった。

 

するりと俺の中から長い指が引き抜かれて、その感触に背筋に悪寒が走る。

 

「…んっくぅ……」

 

…なんか、身体おかしい…

 

その指が俺の腹に伸びてきて、俺が放った白いものを掬い上げ…そしてそれをさっきまで入っていたそこに

塗りつけられる。

中に塗り込められるように指が出入りして、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が聞こえた。

まだこの先があることを知った俺は身を捩る。

 

「…も…もう……お願…い……やめ…てぇ………」

 

まだ呼吸も落ち着かない俺をよそに、ラウールが自分のものを取り出す。取り出された黒くて太いそれは、

これ以上ないくらいに大きく空を仰いでいるのが見えて、一瞬息を飲む。

そしてそれが俺の後ろに宛がわれる…。

けど、これ以上抵抗する事も出来なくて、ただもう動けない身体でそれを受け入れるのを待つほか俺には

出来なかった。

ぬるっとした感触があって…そのあとはもう圧倒的な圧迫感に身を委ねるしかない。

 

「ぅあぁぁっ…!」

 

一気に奥まで突き上げられる。

 

「…ぁ…ぁ………」

 

一瞬呼吸が止まり、視界が…見えてるんだかどうなのかさえ分からない。無意識に流れ落ちる涙のせいで耳が濡れて

冷たい…。

 

ラウールが俺の腰を押さえ込んで、ゆっくりとの自分の身体をグラウンドさせる。

けど、俺の身体はその刺激にもう反応しなくて…

一瞬ラウールの身体の動きが止まる。

そして、放心している俺に手を伸ばしてきて涙で濡れた頬をぬぐわれ、顔が近づけられる。

 

ああ…ラウールだ…

 

その表情がいつもの優し気な表情に戻っていて…でも、眉間に皺が寄ってる…?

目尻に溜まった涙を両方とも吸われて、唇に触れるだけのキスを落とされる。

それが凄く優しくて…切なくて…やっぱり涙が止まらなくて…

 

ずるいよ…そんな風に優しくなんてしないで…

 

 

そして堰を切ったように激しく揺すられる。

 

「あっ…くぅ……んんっ……」

 

その動きと刺激に再び俺の中で快感が呼び起こされる。

 

「うぁっ…あぁっ……ら…ラウー…るゥっ……!」

 

名前を呼ぶと彼のものが一層大きさを増したのを感じた。

そして一気に俺の感じる部分を突き上げるられ、強制的に快楽の渦に叩き落される。思考も意識もその波にあっけなく

のまれていった。

 

…もう、自分がいついったのか、ラウールがどうなったのか、何も分からなかった。

遠くで名前を呼ばれたような気もしたけど、はっきりしない。

 

痛みも何も感じない…ただ恐ろしい程の虚脱感と疲労感に襲われていて…

 

 

……………ただ寒かった…………

 

 

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