星空の下、君と共に。

 

  side: Lulu

 

村から高台にある祈りの場へと夜道を歩く。

後ろから着いてくるのは見た目に寄らず心配性の幼馴染。

こっそりと着いてくる。

気配でバレバレだったけどあまりに緊張した顔だから黙って先を歩いてく。

 

遠い記憶は、スピラの悲しい日常。

私が生まれて初めてそれに触れた時、兄弟の両親が死んだ。

私もチャップも幼かったから覚えてないけれどワッカは少し覚えているって言ってたっけ。

両親を亡くしてから弟の世話を懸命にしていた姿は頼もしいお兄ちゃんで、一人っ子の私にはとても羨ましかった。

晴れた日の大空の様に朗らかな弟と凪いだ日の大海の様に大らかな兄。村の大人達は彼等兄弟をそう評していた。

のんびりとした熱帯の小さな島で穏やかに暮らしていた私達。

ユウナが島にやって来て、女の子の少ない村だったから私とユウナは姉妹のように暮らした。

彼女の事は本当の妹だと今でも思っている。

シンが再び島を襲い、私の両親が死んだ時。

私は冷たくなった両親を想って、家の残骸の影で独り泣いた。

私の姿を見つけたユウナも泣いてたと後でワッカに教えられた。

ユウナは「召喚士になって、きっとシンを倒す。」と。そう言ったと。

シンを倒せるのは召喚士だけ。誰もがなれる訳ではない。召喚士になれるのはスピラの中でもほんの一握り。

それも並の召喚士ではナギ節をもたらす程の力は得られない。

ユウナはきっとなるだろう。彼女に流れる血が。大いなる天分が彼女には与えられていたから。

そして、その才能は私に与えられてはいない。

かくして、私の将来は決まった。

「もう誰も。死なせたくない。本懐を遂げるその日まで。」

黒衣を纏い、魔術を学び、魔力を磨き、修行に必死で励んだ日々は辛くなかったと言えば嘘になる。

自分で決めたことと言っても、幼い身ではその決意を貫くのは容易ではなかった。

挫けてしまいそうな心を戒め、耐えてこれたのはユウナとチャップの笑顔があってこそ。

そして何よりワッカが見守っていてくれたからだと今なら分かる。

 

シンは何もかも奪っていく。小さな希望も。僅かな将来も。夢も。そして過去の懐かしい思い出も。

 

私にとってたった一人の婚約者で、ワッカにとってもたった一人の弟がシンとの戦いに倒れた時。

アンタは哀しみに戦いを挑むように号泣した。

「魂の叫び」そう言うに相応しい哀しみと怒りの泣き声に初めて見た激しさに私はかける言葉を失った。

男の人があんなに声をあげ、涙を流すのを今まで見たことがなかった。

あれがいつもお調子者で賑やかなアンタが内に秘めている本当の自分なんだって。

 

スピラを救うと決心した少女の戦いの旅に同行すると決意してからは、何度もアンタの本気を見てきた。

召喚士となった幼馴染の少女を見守る視線に確かな自信が混ざりだしたのはいつ頃からだったろう。

心から泣いて笑って怒って、どんな時も心のままに振舞うアンタの素直さと暖かい人柄は幼い頃のそのままに。

兄妹の様に、家族の様に常に身近に過ごしてきたのに。

いつの間にあれ程の自信に満ちた精悍な男の顔になったのだろう。

私の前ではいつも優柔不断で落ち着きも頼りもなくて、少しも年上らしくなくて、世話ばかり焼かせるけど、本当は誰よりも優しくて頼れる強い人。

 

チャップを愛してた私を丸ごと、そのまま愛してくれたアンタの不器用な気持に本当はずっと前に気付いてた。

それは幼馴染としての情で男女の愛情なんかじゃないと思い込もうとしてきたのは、きっと恐かったから。

アンタが両親やチャップみたいに突然居なくなるんじゃないかって。

・・・・・でも。そろそろ、素直になってもいいかも・・・ね。

アンタがチャップに似てる気がするって言ってたあの子も言ったわ。「ルールー自身の幸せを考えてもいいんだ。」って。

ユウナのナギ節。それは永遠に続く、スピラの新らしい日常。

突然の悲しい別れはもう二度と来ない。

 

チャップ。アンタは何て言うかしら。

それともブラコンのアンタの事だから「兄ちゃんを頼むな。」かしら。

今は知ってるのよ。アンタ達がずっと私を守ろうとしてくれてたこと。

私だってそんなに弱くはないつもりだけど。たまには大人しく守られてあげる。

 

ほら、近付いて来た。足音が大きくなる。

アンタの緊張した雰囲気にこっちまで巻き込まれそうだわ。

   「ルー。オレと結婚してくれないか?」

 

やっと言ったわね。ワッカ。

 

 

空には満天の星。

大海は星々を映して淡く青く小波が寄せてキラキラと輝く。

空と海が交じり合うこの島で。

暮らしていきましょう。

ワッカとチャップ、そして私・・・。

 

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マサトが足繁く通っているサイト様(リンク有)の小説投稿板に投稿させて頂いた作品です。ワッカ話とセットになってます。

書いた本人も気にいっていたのと意外に好評だった様なので転載することにしました。

アネゴ肌なルールーと尻に敷かれてるけど、亭主関白(・・・;)なワッカって良い夫婦になるんだろうなぁ。ティーダやユウナとは又違った魅力のある公式カップルですね。