愛する君に愛されなかった僕。

渦巻く嫉妬を狂気に変えて、全てを悪魔に捧げた男の側で

それでも彼を愛し、信じ続けた君。

君は死の最後の瞬間でさえも彼を信じていたね。

君の愛が彼に届くことを。

独り残された僕は届かない想いが苦しくて悔しくて死ぬことも叶わずに

棺の中で眠りについた。

 

 

邂 逅 (意)巡り会い

 

 

永き時を経て、私は目覚めた。

君の息子と同じ魔洸の瞳を持つ青年によって。

君の残した息子は愛を知らず、君を殺した男の狂気を糧に育った。

そして今まさにこの世界を破壊しようとしている。

君の愛を手に入れるために星の滅亡を望んでいる。

なんて皮肉なんだろう。

君が信じた愛の結末は幻想でしかありえなかったのか?

私は君の息子を殺すだろう。

君は許してくれるだろうか?

それでも、君を想う私を。

 

 

「ここに居たのか。探してたんだ!」

飛空挺のデッキで風に吹かれて佇むヴィンセントの傍らへとクラウドは歩み寄った。

端正な横顔を持つ男は身動ぎ一つせず、何か物想う風で空を見つめていた。

声を掛け難い空気を振り払うようにクラウドは言葉を続けた。

「いよいよ・・・だな。」

ヴィンセントは「ああ。」と軽く頷き、クラウドへと向き直る。

「なんだ?」

「ヴィンセント。あんたは良いのか?」

「・・・?」

「アイツは、セフィロスはあんたの大事な人の息子なんだろ?」

(ああ、そうか。彼はそんなことを気にしていたのか。)

ふとヴィンセントの脳裏に時折何かを問いたそうにしていたクラウドの表情がよぎった。

「ヤツは倒さねばならない敵だ。」

静かに答えるヴィンセントの声に迷いの欠片も感じない。

それが逆にクラウドの気持をざわざわと波立たせる。

「私が信用できないか?」とヴィンセントが問いを返すと「違う。そうじゃないんだ。」とクラウドは頭を振った。

「あんたが苦しんでるんじゃないかと思ったんだ。」

ライフ・ストリームに呑込まれた後、仲間の下に戻ってきたクラウドは以前とは比べ物にならぬ程に素直な青年になっていた。

出遭った頃の何もかもを悟りきった様な空かした態度も、弱さをさらけ出し全てに見放され荒んでしまった迷い子のような危なげな態度も微塵も感じられない。

星の運命を憂い、エアリスの意志を継ぐのだと真摯に語ったクラウドに賛同して、彼が居ない間も戦いを続けていた仲間達に掛け値なしの信頼を寄せている。

感じたまま伸び伸びと今までの空白を埋めるように快活に振舞うクラウドは年相応の青年の顔になったとこの挺に乗る全ての者が感じているだろう。

(恐らくこれが本来の彼の姿なのだろう。)とヴィンセントは考える。

神羅カンパニーという強大な力の元で野望のために組み込まれ駒の一つに過ぎなかったクラウドが今や自らの人生をモノにし、この星の運命を、未来を左右する希望という名の鍵を携えて目の前に立っている。

『愛する女を救えなかった。駒になること拒んで組織を抜け出した。』

辿った道は似ているのに何処で自分は迷ってしまったのか。

ヴィンセントの内に眠る大いなる力もクラウドの持つ類まれな身体能力も皮肉にもヤツ等から与えられたモノだ。

(抗うだけの力を持っていた。)

今にして思えば、あの時彼女を力ずくででも奪い取れたのかもしれない。彼女がそれを拒んでも。

防げたかもしれない。今の状態も。あの男の狂気も。彼女の息子の暴走も。

あの時、自分が現実から逃げなければ。諦めていなければ。

だが、全ては仮定に過ぎない。

彼女の居ない世界に背を向けて眠りについてしまった自分。

「私の罪でもある。償わねばなるまい。」

重々しい言葉が風に乗ってクラウドの耳に届き、彼の表情が一瞬曇ったのをヴィンセントは見逃さなかった。

口元に僅かに笑みを湛えて「心配するな」と答えてやれば幾分彼の気持も安らぐだろうか?とヴィンセントはふと考えたが

先に「心配なんだ」と呟いたのはクラウドだった。

「あんたが無茶をするんじゃないかと思ってさ。」

魔洸を浴びた者特有の不思議な緑青色の光を湛えた瞳が瞬きも忘れヴィンセントを見つめている。

クラウドはこの戦でヴィンセントが死ぬ気なんじゃないかと、過去への償いに殉じるのではないかと危惧していた。

出遭った頃から無口だったヴィンセントは決戦の時が迫るにつれ、ますます無口になった気がする。

そうかと思うと時折、過去の出来事を感情の少ない声でボソボソとクラウドに語って聞かせた。

彼のそんな態度が死への決意の現れのようでクラウドは不安を掻き立てられていた。

どうしてもヴィンセントに聞かずにはいられなかった。

ヴィンセントは自分よりも遥かに年若い青年の言葉に苦笑した。

クラウドに自分の過去を語ったのはクラウドに問われたからで、確かに過去に悔いはあったが今更どう転んでも時間は戻せないことをヴィンセントは十分に知っている。

ヴィンセントの体は神羅の最高技術によって死を望めない。

老いることもなく死を遠ざけてしまった体に永遠の安息が訪れるのがいつになるのか彼自身検討もつかない。

戦って粉々に砕かれてしまえば再生することもないかも知れないと今までに考えたことはあったがそれを試すことは出来なかった。

それを願った当時、彼より強いものがこの世界に存在しなかったから・・・。

「確かにセフィロスならば私を破壊しつくすことも可能かもしれないな。」

「しかし、考えたことも無かった。」とヴィンセントは言葉を続けた。

不用意な一言に更に表情を硬くしたかと思うと、その後安堵したようなクラウドの顔を見て、ヴィンセントはまた苦笑を浮かべる。

(この若者を安心させてやりたい、信じて欲しいと思う自分がいる。誰かに良いように操られることもない。過去に決着をつけることも、未来に思いを馳せることも自由だと?その鍵を私にも手に入れることが出来たというのか?)

仲間達と行動を共にした僅かな時の内にそう考えることが出来るようになっていた自分に驚く。

眠りについていた時間の何分の1かの時間でしかないと言うのに随分と変わったなとヴィンセントは思った。

「お前達に影響されたようだ。私も未来を信じてみたい。」

ヴィンセントの口から自然と洩れた言葉にクラウドが深い笑みを浮かべている。幾分心が軽くなった気がした。

「もっとも、その後どうするかはまだ分からんが。星が救われれば、考える時間はいくらでもある。違うか?」

と問うヴィンセントの言葉に「もちろんだ!」と力強くガッツポーズ付きで即答されたので笑ってしまった。

クラウドも愉快そうに声を上げて笑う。

「あんたの笑ってる顔、初めてみたよ。そっちのほうがずっと良いな!」

褒められたらしいという事実に何となく居心地が悪くてヴィンセントは表情を引き締めて見せる。

クラウドの明るい笑顔が眩しくてヴィンセントはセフィロスが待つ山の方角へと視線を向けた。

「戦いが終わったら、またその顔見せてくれよ。」クラウドも少し離れて同じ方角を望んだ。

 

「「行こうか!」」

 

固まった決意は決戦の始まりを告げた。

 

 

 

 

君の息子の悲しみを止めるために。

君の愛を届けに行こう。

たとえそれが彼を殺すことであったとしても。

躊躇いも戸惑いもない。

愛するルクレツィア。

もう許しは請わない。

私は先へ進むと決めたから・・・。

 

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某サイト様小説投稿板に投稿させて頂いていたものを転載。FF7ネタで記念すべき初書き。なので記念にアプ(笑)。

最終決戦前の飛行艇「ハイウィンド」のデッキで語り合う二人というコトで。ヴィンセントのキャラが妙に暗い・・・。しかし、本当にコイツ何歳なんだろう?

FF7A.C.にもちゃんと登場してくれる様なので一安心(ヴィンセント好き)。

しかしトレーラーとか見てたら顔色悪すぎだ、ヴィンセント。しかもザックスがザックに名前変わってんじゃん;;

やっと9月に正式発売決定だとか。「9月は春でも夏でもねぇよ。(2005年春か夏の発売予定だった。)」と思ったのはマサトだけではないハズだ。

FF12に至ってはもうイツになることやら・・・。9月には発売日正式発表の予定だそうです。っーつコトはやっぱ発売は2006年か?(泣)