FF11世界にはミスラっていう♀(雌)しか登場しない亜人種(ネコのような顔立ちで二足歩行。女性らしい体つきに長い尻尾を持ち、動作は機敏。)

がいるんだそうです。(プレイヤーが実際に操作できるキャラクターの一つ。)

じゃあ♂(雄)はというと公式設定で『居住エリア内から出ないので生態は謎』となっていました。

そんな謎のミスラ♂(オスラ?)をリトルさんのアレンジで書いたお話です。

ちなみにヒューム(作中「僕」)ってのは人族です。で、作中「俺」はミスラ♂と言うことで・・・。

 

 

 

幼い頃の夢を未だに良く見る事がある。

 

 

澄んだ金色の瞳に独特の刺青の入れられた頬。

柔らかい毛の生えた、とがった耳。

おそらくミスラなのだろうが、夢にでてくるその人の姿はよく見るミスラのような女性らしい身体のラインなどとは

違い、どちらかと言うと小柄なヒューム男性といった印象だった。

 

小さい僕はその人に抱き上げられていて、僕を見る金色の瞳は優しく微笑んでいて。

そしてその人は夢のなかで必ず言うんだ。

 

『私がここに居る事は誰にも言わないでおくれ。君と私だけの秘密だよ。』

 

と。男性としては少し高めのテノールな優しい声で小さく囁いた。

そして僕もその言葉に頷く。

お互いの耳元で交わす内緒の約束事。

その優しくてガラス球の様な金色の瞳意外、彼の顔も表情もはっきりと夢にはでてこない。

ただ青い月明かりに照らされて、その人はとても綺麗だった印象が強烈に残っていた。

 

 

 

 

今朝もその人の夢を見た。

昔は頻繁にみていたその夢も、大人になってからはあまり見なくなっていた。

が、最近気が付いたのだが、どうもジャグナーへ行った後などにはその夢を良く見るような気がする。

 

ここ数日、エレと虎牙目当てでジャグナーに篭っていた。

きっとあの人の夢を見たのもそのせいだろう。

幼い頃にジャグナーなど行った事はない…はずだ。あんな物騒なところ。

ただ一つ思い当たるとすれば、昔ジュノからサンドリアへ移り住んだ事があるその旅路。

 

当時、小さな貿易商をしていた父はジュノで出会った冒険者の母と結婚し、そして僕が生まれた。

その後リスクの大きな貿易ではなく、貧しくても安定した生活を求めて家族でサンドリアへ移り住んだという話は

聞いていた。でも、僕が物心ついたころにはバスティークに居たわけで、正直サンドリアで過ごした記憶なんて

無いに等しい。

恐らくその時ジャグナーを通っただろう事は想像がつく。

ただ、そこで何があったのか、本当にジャグナーを通ったのかさえ僕は覚えていない。また両親も特には何も

言ってはいなかったし。

 

でも、ジャグナーへ行った後に限ってその夢を見るという事は、少なからず僕の中に何かしらの記憶が残っている

可能性があるって事だと思う。

夢から覚めても未だにその人物の姿が僕の瞼の内側に残っているような気がして、何故だか落ち着けない。

 

僕は昨日までの成果であるアイテムを競売に出せるだけ出品し、残りはさっさと契約倉庫業者へ配送した。

そして足早にジュノ上層のチョコボ屋へ向かう。

行ってなにかが分かるなんて限らない。何も分からないかもしれない。

それでも何とも言えない焦りの様な好奇心の様な…落ち着かない何かが僕の中にあって、僕自身それを持て余している

状況に、ただじっとなんてして居られなかった。

 

そしてジャグナーへ再び向かう。

 

 

もうどれ位チョコボを走らせただろう。

元々夜だか昼だか分からない位、常に薄暗いところでもあったし。時間の感覚なんてとっくに手放していた。

いつもはあまり通らないような山沿いや川の上流。あちこち走り回ってみたものの、さして僕の記憶に響くような

場所も物も見当たらない。

 

先日までの疲れもろくに取れていなかった上に、長時間の騎乗で体力を消耗し始めていた事もあり、

どこか休めるところを探し始めた矢先だった。

ぴたりとチョコボの足が止まってしまった。

ジュノからずっとジャグナーを走りつづけて、こいつも限界なのだろう。

短気なチョコボなら限界が近いと振り落とされる事もあるが、こいつはすっと地面にしゃがむと僕に降りるよう

催促してきた。

 

「頑張ってくれたね。ありがとう。」

 

そう言って嘴をさすってやると、気持ちよさそうにクーっと鳴いた。

そしてそいつは厩舎へ帰るべく僕を後にした。

 

「…さて、どうしたもんかなぁ。」

 

チョコボに下ろされた場所はジャグナーの奥地だった。

目の前には小さな泉。

その脇には大カニや陸魚、ボギーの姿まであった。今の僕なら奴と戦って負ける事はないだろうが、あまり得意な

相手でもないし。決して安心して休める場所とも言えなかった。

 

好奇心から目の前の泉に近づく。

水底が見えている。けれどその底は案外深い。

その水底から見事に澄んだ水と光のようなものが常に湧き上がってきて、吸い込まれる様に感じるほど美しい。

その情景に何故だか少し懐かしさを感じた。

その水底をもっとよく覗き込もうと、水際にしゃがみ込んだ時だった。

 

「その水は飲むなっ。魅入られるぞ!」

 

どこかで聞いた事がある声?

後ろから女性とも男性ともつかない少年のような声がして僕は振り向いた。

そこに居たのは金色の瞳と柔らかそうな毛の生えるとがった耳を持ったミスラ。

ミスラ特有の種族装備を上半身に纏い、下はズボンといった出で立ち。

だが、ウィンやカザムで見慣れたミスラとは明らかに違っていた。

 

まず、胸がない。

そして腰のくびれも…。

身体の線もそんなに細くはないし…?

これが噂に聞くあの数少ない男性のミスラ?

ただ噂と違っているのは、彼にはしっぽがない。

ミスラの男は初めて見るはずなんだが…あれ?でも、このシルエットはどこかで見た事があるだろう。

 

「その泉は人を溺れさせて、周りの連中にその肉を与えてるんだ。モンスターより性質が悪いからな。近よんなよっ!」

 

再び彼の声が耳に入る。

そして、僕の中で少し間があって…そして分かった。

それはまさに夢で見たあの人の姿、その声そのものだった。

 

「君…。」

 

その事に気がついて、僕は目の前の彼に釘付けになった。

そしてそのミスラ独特のしなやかな肢体を見て、僕の鼓動が早鳴る。相手は男なのに…?

その急に湧き上がってきた感覚に自分でも信じられなくて、額に妙な汗をかく。

 

でも、改めて見たその肢体はどこか艶があって、男の姿にも関わらず中性的であるような魅力に満ち溢れていた。

それに夢の中で憧れていたその人そのものだったから、こんなにどぎまぎしてるんだろうか…?

その魅力に惹きつけられながらもあっけに取られている僕にミスラの彼は近づいてくる。

 

「ほら。」

 

そのミスラは僕の…おそらく間の抜けた面なんてお構いなしに何かを僕の手に押し付けてきた。

 

「咽喉が渇いてるなら、こっち飲みな。」

 

無意識に受け取ったそれを見ると、皮製の水筒だった。

 

「あ、ありがとう…。」

 

確かに咽喉は渇いていた。言われるまま、ありがたく水筒に口をつける。

 

「こんな奥地までなにしに来たんだ?」

 

金色の瞳が僕を真っ直ぐに覗き込む。あまりにじっと見詰められて、僕の方が視線をそらせてしまう。

 

「いやぁ…ちょっと。人というか場所というか…記憶というか…探しに。」

「なんだいそりゃ?また曖昧なモノを探しに来たもんだなぁ。」

 

事情を知らない他人が聞けば「こいつ変だw」と思われそうな僕の台詞も、彼にはさして驚きの対象にはならなかったらしい。

あっさりと軽く笑って流される。

 

確かに曖昧すぎるんだ。だって、それは僕にとっても正体の掴めないものなんだから。

でも、つい一瞬前までまったくの夢でしかなかった「何か」が、もしかしたら目の前に居るかもしれない。

 

いや…そんなハズはないか。あの夢は昔から見ていたんだ。

 

もし、仮に本当に夢の中の人物が存在していたとしても、その人物が目の前の彼のように若いはずがない。

現実にようやく気が付き、僕は内心がっくりと肩を落とした。

驚いたり焦ったり、落ち込んだり。忙しい僕の様子をじっと見ていたミスラの彼が僕に声を掛けてくる。

 

「ここで夜更かしって訳にもいかないだろう。来いよ。」

 

そして未だに水際にしゃがみ込んだままだった僕に、彼は手を差し伸べた。

 

 

 

 

 

 

 

「あんたも水浴びしてきたら?気持ちいいよ。」

 

水の滴る髪を拭きながら、ミスラである彼は少し離れた川を指差した。

 

「…ああ。うん。」

 

彼に導かれるままに連れてこられたのは、普段は昇れないと思い込んでいた滝の上。

彼だけが知る抜け道なのだと自慢気に話してくれた。

そこには丁度虎穴ほどの横穴があり、彼は普段からそこをねぐらにしていると言う。

おそらくその辺のボギーからせしめた木綿布でつくったのであろう簡単なカーテン状の仕切りを施し、

まるで小さい子供が喜びそうな「秘密基地」の雰囲気だ。

どうやら今晩は泊まっていけということらしい。

その秘密基地の真中で小さな焚き火が炊かれていて、そこはとても暖かかった。

 

「…ここの水は大丈夫なのか?」

 

そこから見える川を指差しながら恐る恐る聞くと、一瞬彼の金色の瞳が僕を見てぱちくりと大きく見開かれた。

そして間があいて…

 

「ぷっあはは…大丈夫。危ないのはあそこの湧き水だけだよ。」

 

笑われた…そうは言っても、ああ言われてはジャグナーじゅうの水辺を疑ってしまうと思うのだが

…自分の発言がそこまで可笑しいとは思えなかった僕は、ほんのちょっぴりむっとした。

 

「ああ、ごめん。気を悪くしないでくれよ。ただ俺には他人が珍しくてね。あんたの一挙一動が楽しいんだよな。」

 

同じ冒険者の彼が他人が珍しいというのもおかしな話だ。

 

「珍しい?」

 

「うん。殆どの時間をジャグナーの中で一人すごしてるから。ジュノにも買出しなどには行くこともあるけど、

寄り付かないようにしてるからさ。人混み嫌いだしw」

「ふう…ん」

 

冒険者にしては変った生活をしてるんだな…でも、そんな孤独な生活が、何故だか酷く彼には似合ってると感じた。

まぁ、考えてみれば男性のミスラがジュノを闊歩してたらちょっとした騒ぎになりそうだし。それに男性のミスラといえば…。

 

「僕には君の方が珍しいけど…。いいの?カザムから出られないって聞いてたけど?」

 

そう、男性のミスラはカザムの街中とウィンの特定の施設からは出られない掟なのだと噂に聞いていた。

普段は人目に触れることなく生活しているのだと。

 

「俺の事聞きたい?だったらさ、あんたの話からまず聞かせてよ。」

 

ずいっと身を乗り出してきた彼の瞳は、素直に好奇心でキラキラとしていた。まったく人見知りをする様子がない。

 

「ここに何を探しにきたの?全部ホントじゃなくたっていいからさ、色々話を聞かせてっ!」

 

まるっきり好奇心の塊。あまりに真っ直ぐに僕を覗き込んで話をせがむその姿が実に微笑ましかった。

他人に話しても面白くもないだろう僕の話も、彼にはきっと物語りのように感じてくれるかもしれない。

だけど…ちょっとじらしてみたり。

 

「その前に水浴びしてくる。」

 

えー。と残念そうな彼の声を後に川へ向かった僕は…ものの数十秒後には後悔していた。

 

 

 

川の水は予想以上に冷たかった。

それでも衣類はしっとりと湿度を含み、チョコボの騎乗で埃まみれだったし。さっぱりしたいのもあって、

寒いのも冷たいのも我慢して水浴びを済ませたのだった。

けれど、水浴びで冷えた身体も彼の「秘密基地」内では寒さは殆ど感じずに済んだ。下には虎の毛皮を

絨毯替わりに敷いてあり横穴の床はそれほど冷たくはなかったし、焚き火も近くにあったので暖かい。

僕はそこに横になり毛布に包まる。

 

この辺りで容易に手に入る素材だけで上手く快適な空間を作り出しているものだと、妙に感心させられる。

この毛布だってこのあたりの羊から取れる毛皮から羊毛が手に入る。

横穴を仕切っている布だってこの辺のボギーが落としてくれる。

食料もまぁ困らない。隠居生活をするにはうってつけの場所かもしれない。…等とぼんやり考えていたら。

 

「ねぇ、そろそろ話を聞かせてくれよ?」

 

横になりながら焚き火を眺めていた僕を真似たのか、

その反対側で同じように身体を横たえて彼は催促の眼差しをこちらへ向けていた。

 

「んー…そうだな、どんな話がいいか…。やっぱり僕が探してたものってのが気になる?」

 

そう聞くと彼は大きくうんうんと頷いて見せた。

人に自分の話を聞かせる経験なんて殆どなかったし、あまり上手く話せる自信もなかったが余りにも素直に

期待されて、僕も嫌な気はしなかったし。

 

さて、どう話したものか…

 

僕は例の夢の事をゆっくりと思い出しながら話を始める。

昔は頻繁に見ていた夢。

夢の中の人物の事。その人物がとても綺麗で、僕の憧れの対象であること。夢の中の情景。

木々の間から漏れた月明かりが美しかったこと。そして夢の中の人物と交わした約束の事。

 

「君を最初に見たときは本当に夢の中の人かと思った位、雰囲気とか声とかその金色の瞳もそっくりだって思ったんだ。」

 

よくよく彼の顔を見てみると顔の側面に入れられている刺青も良く似ているような気もする。

 

「その夢の場所がジャグナーって?」

「いや、確信はないんだよ。それに、本当にあった話かどうかも分からないし。」

 

ふーんと言うと、しばらく彼は何かを考えていたようだった。

 

「俺に雰囲気が似てるのか…。それがもし本当にジャグナーであった話なら…。」

 

そしてまたじっとこちらを見てくる。何か言いた気な時にはまず相手の目を見るのが彼の癖らしい。

 

「それ、俺の親父かもよ。」

 

そしてミスラの彼はにやりと笑った。

 

声が出なかった。

あまりに驚いて。

正直、実在する人物だと信じていたわけじゃなかったし。

あまりに曖昧な僕の夢から、今まさに現実が生まれてきたような、奇跡でも起きたような感覚にとらわれて頭の中が

パニックになる。

 

「約束だからな、今度は俺の話をしてやるよ。親父の事とか、俺が何でこんなところで生活してるか。」

 

そう言うと彼は身体を起こして、火にかけていた鍋から木彫りの器になにやら湯気の立つ液体を移して僕に手渡してきた。

つんとしたアルコール臭。

一口それを口に含むとシナモンの香と果実の甘すっぱい味がした。

彼は自分の器にもその液体を注ぐと、こちらにウィンクして見せた。

どうやら、彼の自信作らしい。

 

「俺の雰囲気ってさ、中性的だと思わない?ミスラの男の中でも特殊なんだよ、これって。」

 

確かに最初会った時に感じた。年齢は十分成人に達しているのだろうが、未成熟な少年的な魅力。

 

彼は徐に立ちあがると、履いていたズボンを脱ぎだした。その下には種族装備を身に付けている。

そして出て来たしっぽは…

それは見慣れた鞭のような長いしっぽではなかった。中途半端に短くて、そしてその先端は痛々しく折れ曲がっていた。

 

「…骨折?」

 

恐る恐る聞くと、彼は首を横に振った。

 

「生まれつき。親父や俺はカザムじゃ『カギ』って呼ばれてる。数少ない男のなかでもごく稀にこんなしっぽの

奴が生まれるらしい。でもって『カギ』ってのはしっぽだけの異常じゃないんだよねぇ。」

 

彼の話はこうだった。

ミスラの男と言えば戦士である女性のミスラにその時期が訪れれば子供を授けるのが役目である。

…にも関わらず、『カギ』は子供を作る事を許されない。

呪われた仔であるとか色々謂れがあるようだが、一説によると子孫繁栄の能力に欠けているのだと。

『カギ』の子は死産・流産が多く、ミスラの数自体がもっと少なかった昔は子孫を残す機会を大切にするためにも

『カギ』はミスラの女性との交わりを禁じられたのだと。

その風習が今でも残っていて、彼ら『カギ』は女性との交配を防止するために幼年期の内に社会から隔離されるのだという。

殆ど監禁といった状態で。

 

「昔は『カギ』が生まれると成人前にタマとっちゃったり、処分されてた時代もあったらしい。」

 

さすがに閉口した。

タマ…とるって…想像もしたくないのに背筋が寒くなる。

 

「基本的に『カギ』って異常児なんだよ。成長しても「雄らしく」はならないし、寿命も短いし。

そんなものはミスラ族にとって子孫を残す価値がない。…でもその代わり、高く売れるらしいよ?」

 

「売れるぅ!?」

 

意外な言葉に僕は素っ頓狂な声を上げた。売れるって…売るって、人身売買か売春かって事か!?

 

「ノーグ経由で闇の中ってねw 」

 

うわ…マジでそのまんまか。確かにこの中性的な魅力、物好きには高く売れるだろうけど…

 

「親父は売り飛ばされた先のどっかから逃げてきたらしいよ。それで、ここジャグナーに隠れるように暮らしてった

って話はお袋から聞いてた。俺の場合はここで生まれてここで育ったの。お袋が『カギ』の俺を守るために、

あえて危険なここで俺を育ててくれたんだ。」

 

なるほど。彼の話が本当だとすれば、僕が夢でみたあの人は本当にここで会った人なのかも知れない。

そう考えれば、夢の中の人物と交わした約束の内容にも合点がいく。

一通り話を終えて、またもや彼がじっとこちらを見ている。

小さな焚き火の光を反射して、その金色の瞳に妖しい光が宿っているようにさえ僕には思えた。

 

「あんたってさ、俺を見る時なんとも言えない表情するよな…。」

 

一瞬何を言われているのか理解できなかった。そして彼は横になったまま話を聞いていた僕の方へと歩み寄ってくる。

 

「ねぇ…俺ってそんなに魅力的?」

 

僕の側で膝をつくとずいっと上半身を乗り出して、さらに俺に近づいてくる。

その表情は…明らかにある種の熱を帯びていた。

 

「【えーっと…】」

 

「そんな愛しそうに見詰められたらさ、俺だって誤解しちゃうわけ。わかる?」

 

彼が言わんとする事の意味が理解できたのは数秒経ってからだった。

僕はある種の身の危険を感じて、包まっていた毛布ごと後ろへずりずりと後ず去った。

が、直ぐに横穴の壁に退路を立たれてしまう。

 

でも、でも、僕も君もは男なんですが…?

 

「正直に言わないと…とって食うよw 人の肉って美味いらしいって、聞いたんだよねぇ…。」

 

薄い唇からちろりと赤い舌が見えて、上唇をゆっくりと舐める。

誰からそんな事聞いたんだよw

脅しだ…これは明らかに脅されてる!てか、ホントに食ったりしないだろうとは思ってみたものの、それでも

うっとりとこちらを見られてにじり寄られて、さすがに退いた。

 

それでも彼の瞳が欲を持った光を放っていて。

その光に僕の視線が捕らえられて、何か甘くて白い炎に脳が焼かれる。

そして、僕はいとも簡単に彼に魅入られてしまった…

 

「君はとても…綺麗。それに、艶っぽいし…。」

 

顔が…耳までも熱い…きっと赤面してるに違いない。

さっき飲んだ酒のせいなんかじゃない…まともに彼の顔が見れずに視線を外す。

そんな僕の様子と言葉に、彼の表情が嬉しそうに緩む。

それと同時に金色の瞳の中の欲が一層濃厚さを増したのを僕は見た。

 

「なら…俺を抱いてみない?俺は…あんたの身体に凄く興味がある。俺にはない、男らしい身体に…。」

 

抱く…?僕が君を?

 

男と寝た事なんてなかったけど、このミスラに誘われて何故だか嫌な気はまったくしなかった。

いや…むしろそれを望んでいたかもしれない。

 

僕の頬に彼の細い指が宛がわれ、やや強引に彼の方を向かされる。

金色の…澄んだ瞳に心の奥底まで覗かれているような感覚に、

僕の中で張り詰めていた何かがぷつんと切れるような感覚があった。

 

そして僕は己の欲に身を委ねた。

 

 

 

 

濃密な口付けを繰り返す。彼の唇も舌も、柔らかくて熱かった。

時々彼の短く曲がったしっぽに触れると、面白いように彼の身体は反応する。

 

「んっ…あぁっ……駄目…しっぽ…はぁ…」

 

そのラインをなぞるように根元から先端まで毛並みを撫でると、声を上げて身体を震わせながら僕にしがみ付く。

その様子がたまらなくかわいらしかった。

そしてまた口付け。

舌が絡み合い、お互いがお互いを攻め、そして貪るように求め合う。

彼の舌の付け根を攻めると、苦しげな声が咽喉の奥でくぐもった音を出す。

眉間に寄せられたしわは快楽のためか…目じりに涙を貯めた表情がなまめかしい。

 

「あんた…キス上手いのな…。」

 

長い口付けの後に息を乱しながら彼がそう言った。

 

「…君ほどじゃないと思うよ。」

 

口付けとしっぽへの愛撫だけで息も上がって上気した彼の様子に気をよくした僕は、さらに彼の身体を探っていく。

種族装備の内側に手を滑り込ませ、胸の突起を探り当てる。

案の定、彼の身体がぴくんと跳ねた。

…感度は良すぎるくらい。

そんな彼の様子に、僕も身体の内側から疼きを感じずにはいられなかった。

彼の反応の一つ一つが、僕を彼の身体に執着させていく。

首筋にキスを落としながら、彼の感じるところを執拗に攻める。

 

「…ぅ…ん…ふぁ……んっ」

 

身体の下に敷いた毛布を握り締めた彼の指先が白い。

背中からしっぽの付け根までついっと指を這わすと、見事に彼の身体がしなって反り上がる。

 

「…あぁ!」

 

あまりの彼の反応のよさに僕の表情が緩むと、少し悔しいのか彼の金色の瞳が軽く僕を睨み付ける。

 

「女…相手じゃぁない、んだからぁ…あん…まりぃ…ぁ…じらすな…よぉ…」

 

胸への愛撫も既に彼にはじれったいらしく、僕の腕を掴むと自分のしっぽの付け根の方へと誘導する。

腰の辺りから種族装備を掴んで下へおろすと彼の下半身が露になる。

その中心はすでにはちきれんばかりに大きさを増し、熱くなっていた。

いくら中性的な身体の作りでも、ここだけは男を主張している。

その熱い中心を掌でそっと包み込むと、彼は咽喉の奥からため息のような深い息を吐いた。

そしてゆっくりとその手を上下させてやると、彼は素直に快楽に身を捩る。

 

「オイル、ある?」

 

聞くと、彼が黙って少し離れた辺りを指差した。そこにあった瓶を手に取り中身のオイルを手に垂らす。

オイルで濡れた指を後に当てると、一瞬彼の身体が硬直する。

 

「…嫌か?」

 

聞くと彼は僕の首筋に思い切りしがみ付いてきて…

 

「ば…かっ!今更聞くなよっ!じれったいな…」

 

どんな顔をしてるのか見てみたかったが…しがみ付かれていて、見えたのはとがった耳のはしっこだけ。

でも、僕にはその耳もどこか赤くなっているように見えた。

まぁ…嫌と言われても、僕だって…もう止まらないけれどね。

 

 

 

「あ!あぁんっ…ふぅ…あぁ!」

 

腰を打ち付けるたびに彼の声が横穴の中に響く。後ろの圧迫感が苦しいのか、それとも快楽に溺れているのか

…おそらくは両方だろうが。

十分にオイルで入り口と内壁も解した彼の後は、案外すんなりと僕自身を受け入れた。

そしてそこは想像以上にキツかった。

彼の身体は快楽に対して非常に素直な反応を示し、僕はその乱れる姿にどんどん深みに嵌っていく。

ゆっくりとぎりぎりまで僕自身を引き抜くと、もの欲しそうに尻を振って僕のものにすがってくる。

そんな姿に愛おしさが沸き起こる。

 

「…もぅ…」

 

潤んだ目でイカせてくれとせがむ彼。だが、そんな彼の顔も今の僕の行動を煽ってるようにしか感じられない。

乱れる姿がまだ見たくて、僕の返事は…

 

「まだ駄目…」

 

そうは言ってみたものの、実は僕自身余裕があるわけではなかったのだが。

ぬるくゆっくりと出し入れを繰り返す。時々彼の…探り当てた感じる部分に強く僕自身を押し付けてやる。

その度に彼は声を上げた。

 

「あぁっ…んあ…ぁ……」

 

感じるポイントに刺激を与える度に、彼の内壁が容赦なく僕自身を締め上げる。

 

「…くっ」

 

限界が近い僕の表情もゆがむ。

 

「…あぁ…俺のが…イイんだね…」

 

息も切れ切れに、僕の表情を見てうっとりとする彼…もう限界。

駄目だ、そんな顔されたら…

 

「僕も…もう…」

 

その言葉に僕を急かすように彼は僕の首にしがみ付いてくる。

僕は彼の最も敏感な場所にめがけて腰を勢い良く打ちつけた。

 

「…!!」

 

そして、僕らは同時に果てた。

 

 

 

 

こんな魅力的な生き物がこの世に居たなんて、今まで知らなかった。

僕は彼のその妖艶ともいえる魅力から逃れることはできるだろうか…?

 

 

 

 

 

 

そしてまたあの夢を見る。

青い月明かりに浮かび上がったその人の姿。

柔らかな毛が生えた耳。

僕の頭を撫でる暖かい手。

 

澄んだ金色の瞳が僕をじっと見詰めている。

とても優しげなその瞳。

でもその瞳の持ち主を、今の僕はもう一人知っている…

 

 

「大きくなったね…。」

 

そう言ってその人は微笑んだ。

…あれ?いつもと台詞が違うよ?

そしてその人は僕の頬に軽くキスをしてくれた。柔らかい唇…

それが夢うつつの僕の耳元で囁かれた言葉だったなんて、僕は知る由もなかった…

 

 

 

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「ミスラ♂ってどんなよ?」と言うお題で『FF11腐女子交流サイト桃砂塔・桃缶様(リンク有)』の『ミスラ♂祭』にリトルさんが書いたものを転載しました。

リトルさんのFF小説初書き作品だそうです。 by.masato